真間川のほとりで

日本福音ルーテル市川教会の中島康文牧師のエッセイです

  物言えない世界

「そんな風に弱ってから大変でしたけど、2年位私も世話をしましたよ」と、500m程離れた公園でご婦人に声を掛けられたのは、昨年の今頃であった。ヨロヨロ歩く老犬(当時15才5か月)を連れて、散歩していたからである。私ですら引きずられてしまう程元気だったが、その頃には、後ろ足に力が入らず時折座り込むようになって...

逆算社会  

ワクチン接種券が私に届いたのは4月末だった。いつ接種できるか分からないと思っていたので、予想外の速さに「オッ、もう来たか!」と喜んで封を切った。接種できる日付があるのかと思ったら、「予約をしてください」と記されている。すぐさま市川市のホームページを開くと、「現在、予約は受け付けておりません」。その...

ニュースにならない人たちのこと

「我慢のゴールデンウィーク」が終わり、人出はコロナ以前に比べればかなりの減少がみられたというが、昨年に比べると人出は増加し、感染者の急激な減少とはならなかった。感染者・重症者の棒グラフ、重症化した人々の辛い状況、遅々として進まぬワクチン接種等々、連日ニュースに取り上げられ、心を痛める日々が続く。

「オオカミが来た!」

3月に緊急事態宣言が解除されたものの、感染者が再び増加傾向となり、現在はまん延防止措置指定都市となっている我が市川市。そして1都2府1県へ再び緊急事態の宣言。感染に歯止めがかかる気配が感じられない。なんともやるせない。「人流増→感染増→宣言→感染減→宣言解除→始めに戻る」いつまで繰り返したら良いのだろ...

「一瞬」が増えた!?

ある晴れた日の昼前、川沿いの道を歩いていて、初老の男性とすれ違った。前を向き背筋がピンとして、しかしゆったりとにこやかな表情を浮かべながら歩いておられた。一瞬のことであったが、すれ違った私の気持ちも穏やかになっていくようであった。それは15,6年も前のことなのに、日時も季節も覚えていないのに、まして...

弱さは優しさを引き出す②

4月は年度の始まり。子どもたちもそれぞれに学年が上がり、それだけで成長しているように感じることが多い。学年が変わったというだけで、さほど変わらないのだが、大人がそのように見てしまうということなのだろう。背後にあるのは、「成長すること」イコール「自分で出来ることが増えることで、それはとても良いことだ...

弱さは優しさを引き出す①

我が家の愛犬は、3月末で16才3ヵ月、人間に換算すれば100才を優に超えた老犬である。最近は後ろ足が弱くなり、自宅から教会の前の道路に出る程度である。ヨタヨタしながら道路に出ては、後ろ足に力が入らないために倒れこむことも多い。そんな状態を見かねた通行中の方が、良く声を掛けてくださる。「いくつですか?」と...