バッハとキリスト教神学、バッハの生涯(学生時代)

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ルーテル教会の神学的基礎の学習

リューネブルクとその周辺では、今も記憶に残るオルガン作曲家の演奏に触れる機会も多かった。少年バッハは機会があれば出掛けて行ってこれに接した。ギムナジウム以上の高等教育の機会がなかった少年にとってまさに耳学問の時期だった。事実若いバッハのオルガン作品にはこうした影響をはっきりと認めることができるのである。
ギムナジウムでは正規の授業の一つとして「神学初歩」があった。教えられたのはルーテル教会の信仰と神学の基礎であった。そのとき用いられた教科書は小冊ながら、ラテン語で書かれたL.フッターの『神学諸問題提要』とでも訳すべき本だった。今でも大学神学部学生のゼミナール用のためか、出版されていて、読むことができるから、私も読んだことがある。「神のことばとはなんですか」、「神のことばとは律法と福音です」という具合に、神学の基礎テーマが問答形式で展開されていく本だが、宗教改革から二百年、まだルーテル教会とローマ・カトリック教会との神学的対立は続き、ルーテル教会内ですら正統派と、近代思想への接近派との対立が進行中だった時代のこと、少年バッハはギムナジウムでルーテル教会の神学の基礎をしっかりと身に付けたことになる。だから彼は単なる作曲家というだけでなく、教会カンタータや受難曲などの歌詞についても決して詩人や作詞家たち任せではなかった。自らルター訳聖書を読み、当時の著名な説教者の説教集を読み、ルター教会正統派の聖書注解をひもどいて自らの理解を深めていた。それだから歌詞に手を加えて直したり、作詞者に示唆を与えたりした事実がいろいろと確認されている。ギムナジウムでのルーテル教会の神学初歩の学びは生涯にわたって続けられ、その教会音楽にも深く反映されることとなった。

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